膝の痛み
当院には膝の痛みを訴える方がたくさん来院されます。
膝の痛みは大きく分けると、怪我によるものとオーバーユース(酷使)によるもの、そして2つの合わさったものに分けられます。
スポーツでは、タックルや衝突によって強く膝が捻れたり前後にズレたりして靭帯を痛めたり、水泳やサッカーなどで繰り返し捻る力が加わることで、損傷が起きることがあります。
加齢により膝まわりの筋肉が弱まると、膝の安定性が失われます。膝が開きO脚になってくることもあります。
その状態で日常的に屈伸や歩行を繰り返すことにより、膝に不自然な負担がかかり軟骨や半月板を損傷してしまいます。
損傷が起きると修復と栄養を運ぶため水が溜まり、腫れたり、曲がりにくくなったりします。
軟骨がすり減り、悪化すると骨にまで変形がみらるようになります。
怪我であれば安静によって回復を待ちますが、加齢による痛みは安静だけでは改善しません。
外出がおっくうになるなど生活に質が低下してしまいますので、一日も早く治したいものです。
当院では膝の変形のある無しにかかわらず、まずは全身のアライメントを整え、必要に応じて膝の調整を行い、家庭でできる簡単な体操によって改善を目指します。
膝は痛む部分によって下記のように分けることもできます。
膝の内側の関節の痛み
▶変形性膝関節症
膝の外側の痛み
▶腸脛靭帯炎/ランナー膝
膝の裏側の痛み
▶ベーカー嚢胞/ベーカー嚢腫
お皿の下の痛み
▶オスグッド病
膝の内側の痛み
▶鵞足炎
膝の中の靭帯の痛み
▶前十字靭帯断裂
膝の中の半月板の痛み
▶半月板損傷
前十字靭帯断裂(膝痛)
前十字靭帯
スポーツ選手の怪我の報道などでよく耳にします。
前十字靭帯は膝の中にある強い靭帯で、スネの骨(脛骨)が前にずれ過ぎたり、膝がねじれ過ぎたりしないよう安定させる働きがあります。
前十字靭帯断裂の原因
片方の脚を軸足として急激に方向転換する動作、脚へのタックル、相手との衝突によって損傷します。
断裂した場合、自力での再生は難しいです。
症状
損傷してしまうと膝の安定性が失われ、膝が外れるような感覚が起きることもあります。腫れ、熱をともなくことがあり、膝が伸び切らなかったり、正座ができなく場合もあります。
腸脛靭帯炎
腸脛靭帯炎とは
腸脛靭帯は大腿筋膜張筋と大殿筋からつながり、骨盤の腸骨稜から起こり、腿の外側を通って脛骨(スネの骨)のガーディ結節に至ります。膝関節安定させる働きがあります。
腸脛靭帯炎/ランナー膝
膝の外側に痛みがでます。ランナーに多いため「ランナー膝」とも呼ばれます。
膝の曲げ伸ばしの際(歩行やランニング)、膝の外側を通る腸脛靭帯は腿の骨の外側のでっぱり(大腿骨外顆)の上を滑ります。
この繰り返しによりマラソンなどのオーバーユースで、この部分に炎症が起きてきます。ランナー膝と呼ばれることもあります。
過度の膝の曲げ伸ばしによる痛みなので、サイクリングでも起きることがあります。腿の骨の外側のでっぱり部(大腿骨外顆)に痛みがでるほか、腿の外側の過度の緊張などがみられます。X脚、O脚の方によくみられるます。
当院の治療
同じ運動をしても痛みのでないケースもありますので、オーバーユース(使い過ぎ)+脚のアライメントのゆがみと考ています。
全身のアライメントから整え直し、筋肉の緊張を緩めます。
変形性膝関節症
変形性膝関節症とは
女性に多い症状です。
膝まわりの筋肉のバランスが崩れ、O脚ぎみになると膝の内側に負担がかかります。O脚の傾向は年齢とともに進みやすくなるようです。
この負担が進むと、膝を構成する腿の骨(大腿骨)とヒザ下の骨(脛骨)の間の軟骨がすり減ってきます。
この時にでる軟骨の細かいゴミが刺激となり、体に備わっている修復の仕組みが働きだします。これが関節の炎症です。
水(関節液)がたまり腫れるのは、膝の修復や膝への栄養を送るための、自然治癒力による反応です。
階段の上り下りや正座、座った姿勢から立つ時などで膝が痛んだり、また脚をのばしにくくなったりします。
軟骨がすり減りが進むと、その下の骨の負担がかかる部分に変形が起きてきます。
ただ変形があっても痛みのない方もあるようです。
当院では脚の整え膝への負担を減らすとともに、簡単が筋肉トレーニングをしていただくことで対応いたします。
オスグッド病
オスグッド・シュラッター病
膝のお皿の下の部分に痛みがでます。
正式の名称はオスグッド・シュラッター病です。二人の医師の名前です。通称ではオスグットと呼ばれることもあります。
日常的にスポーツをしている成長期の男子によくみられます。特にジャンプをする時の屈伸動作、サッカーなどのキックの動作で痛めやすいようです。
激しい屈伸によって、腿の前側の筋肉が膝のお皿を経て付着する脛骨粗面がひっぱられ(牽引力)ます。成長期では骨が柔らかい為、痛みのほか骨の隆起(でっぱり)が起きることもあります。
現在ではあまり行なわれていませんが、「うさぎ跳び」でも起きやすくなるようです。
隆起を治すことはできませんが、全身及び脚のアライメントを整え直すことで、痛みが軽減が期待できます。
ベーカー嚢胞/ベーカー嚢腫(膝痛)
膝の裏側が腫れて膨らんでくることがあります。
原因
膝のまわりには膝の滑らかな動きを助けるためにいくつかの液体の袋(滑液包)があります。
膝の変形性膝関節症や半月板損傷などがおきると、修復や栄養を送るために水(関節液)が溜まってきます。その水が溢れ膝の後ろ側に押し出されて膨らんできます。
膨らみはふくらはぎのほうまで広がることもあります。
症状
痛みがありませんが、膝を曲げる時に圧迫感、違和感がでたり、正座がしにくくなります。
半月板損傷(膝痛)
半月板とは
半月板は膝関節の中、外側と内側にある柔らかい板です。内側はC型、外側はO型をしています。
膝が滑らかに動くために大切な部分です。
大腿骨(腿の骨)と脛骨(スネの骨)からなる膝関節を安定させたり、膝のスムーズな動きを助けたり、膝への衝撃をやわらげるクッションの役割をしています。
半月板損傷
スポーツ時に強くひねったり、また着地の衝撃などで損傷します。また水泳の平泳ぎでも膝にひねる力が加わる為損傷が起きます。
また高齢の方では、長年の不自然な膝への負荷か起きることもあります。
症状としては膝を伸ばす時に引っかかり感があったり、まっすぐ伸ばし切れなくなります。また正座で痛みがでます。
悪化すると膝に水が溜まったり、歩いている時に足がロックして動かなくなることもあります。
鵞足炎
鵞足とは
鵞足とは鵞足の鵞はガチョウのことです。
あまり目にすることのない言葉ですが、れっきとした人の体の解剖学的な名称です。
膝の内側にあり縫工筋、薄筋、半腱様筋が脛骨(スネの骨)の内側で付着している部分です。
縫工筋は骨盤の上前腸骨棘から、薄筋は恥骨下部から、半腱様筋は坐骨結節からそれぞれ起こり鵞足部にいたります。
その3つの筋肉が硬い腱になり、脛骨に付着する鵞足部分ではガチョウの足のようにひろがった形になっています。
この形がガチョウの足に似ているため、こう呼ばれています。
鵞足炎
階段の上り下りの時などに、膝の内側の少し下の部分が痛みます。あぐらや正座でも痛みがでます。睡眠時に痛みがでることもあります。
鵞足炎横に動く動作の多いスポーツ、またランナー、サッカー選手などにもよくみられます。つま先が外に向く動作、膝が内側を向く動作、ランニングやキック時のオーバーユースで、腱が繰り返し骨にこすれることにより炎症が起きます。また変形性膝関節症の方、X脚ぎみの方にもみられます。
縫工筋の近くを伏在神経という神経が走行しています。筋の緊張によっては神経が刺激され、神経に関連した膝下の広い部分に痛みがでることもあります。
筋肉が膝のまわりで滑らかに動けるよう鵞足胞という滑液の入った袋が膝内側側副靱帯上に存在しますが、これもオーバーユースや膝の変形などによって炎症(鵞足胞炎)を起こすことがあります。
当院の治療
上前腸骨棘、恥骨下部、鵞足部からなる三角形のゆがみととらえ、体のひずみを整えることで対応します。
アンハッピー・トライアド(不幸の三兆)
以下の複合的な損傷をアンハッピー・トライアドと呼びます。
・前十字靭帯断裂
・内側半月板
・内側側副靭帯損傷