頸椎起因性の肩こりとは?
頸椎起因性の肩こりとは、首の筋肉の緊張や頸椎(けいつい)の損傷が原因で引き起こされる症状です。 頸椎とは、首の骨のことで、7つの椎骨(ついこつ)という小さな骨からなっています。 この頸椎には、神経や血管が通っており、首や肩、腕などに重要な働きをしています。 しかし、頸椎は他の部分に比べて動きやすく、負担もかかりやすいため、痛みやしびれなどのトラブルが起こりやすい部位でもあります2。
頸椎起因性の肩こりの原因
頸椎起因性の肩こりの原因は、大きく分けて2つあります。 一つは、首の筋肉が緊張することで、血流が悪くなり、筋肉が硬くなってしまうことです。 これは、長時間同じ姿勢でパソコンやスマホを使ったり、ストレスを感じたりすることで起こります。 もう一つは、頸椎が変形したり、ずれたりすることで、神経や血管が圧迫されてしまうことです。これは、加齢や外傷などによって起こります。
頸椎起因性の肩こりの症状
頸椎起因性の肩こりの症状は、以下のようなものがあります。
- 首から肩にかけて張ったり、凝ったりする感じがする。
- 首を動かすと痛みが走る。
- 肩や腕にしびれや痛みが出る。
- 頭痛や吐き気を伴う。
- 手先が冷える。
- 目がかすんだり、めまいがしたりする。
これらの症状は個人差がありますが、一般的には左側に多く出る傾向があります。 また、時間帯によっても変化する場合があります。朝起きた時や夜寝る前に強く感じる人もいます。
頸椎起因性の肩こりの診断方法
頸椎起因性の肩こりの診断方法は、主に以下のようなものがあります 。
- 問診:症状の出方や発症の経緯などを聞きます。
- 視診:首や肩の形や動きを見ます。
- 触診:首や肩の筋肉や関節を触って、痛みや硬さを確かめます。
- 神経学的検査:反射や感覚などの神経機能を調べます。
- 画像検査:レントゲンやMRIなどで、頸椎の状態を詳しく見ます。
これらの検査によって、頸椎起因性の肩こりかどうか、またその原因や程度を判断します。
頸椎起因性の肩こりは、他の病気と似た症状を引き起こすことがあるため、正確な診断が重要です。
例えば、心臓病や脳卒中なども、首や肩に痛みやしびれを感じることがあります。そのため、自己判断せずに、早めに医師に相談することが大切です。
頸椎起因性の肩こりの治療法
頸椎起因性の肩こりの治療法は、大きく分けて保存的治療法と手術的治療法があります。
保存的治療法は、薬物療法や物理療法や運動療法などで、痛みや炎症を抑えたり、筋力や柔軟性を高めたりする方法です。
手術的治療法は、頸椎に異常がある場合に行われる方法で、頸椎を固定したり、圧迫されている神経や血管を解放したりする方法です 。
保存的治療法
保存的治療法は、一般的に最初に行われる治療法です。以下のようなものがあります 。
薬物療法
薬物療法では、以下のような薬剤が用いられます。
- 鎮痛剤:イブプロフェンやアセトアミノフェンなどで、痛みを和らげます。
- 筋弛緩剤:シクロベンザプリンやテトラゾシンなどで、筋肉のけいれんをほぐします。
- ステロイド剤:プレドニゾロンやメチルプレドニゾロンなどで、炎症を抑えます。
- 抗うつ剤:アミトリプチリンやドキセピンなどで、神経伝達物質のバランスを整えます。
物理療法
物理療法では、以下のような方法が用いられます。
- 温熱療法:身体の深部まで熱を浸透させることで、血流を促進し、筋肉の緊張を緩和する治療法です。この治療法は、筋肉の痛みやこり、関節痛、筋肉の損傷の治療に広く用いられています。
また、温熱療法は、身体をリラックスさせ、ストレスを軽減するのにも役立ちます。温熱療法には、温水ボトルや電気毛布、温湿布などが用いられます。
治療時間や温度は、患者の体調や症状に合わせて調整されます。 - 冷却療法:炎症を抑え、痛みを和らげるために行われます。
この治療法は、急性または慢性の疼痛管理に役立ちます。 冷却療法は、熱源を体から取り除き、体温を下げることで、炎症を抑えます。
この方法は、急性または慢性の関節痛、筋肉痛、頭痛、腰痛、膝痛、肩痛、腱炎、捻挫、打撲、痔、帯状疱疹、虫刺されなどに適用されます。冷却療法は、氷、氷水、氷のパック、冷凍食品、冷却スプレーなどで行われます。 - 電気刺激療法:痛み管理のために使用される治療法であり、神経の伝達を調節することで痛みを軽減します。
この治療法は、症状の程度に応じて、さまざまな病態に対して使用されます。
例えば、腰痛や首の痛み、神経障害、筋萎縮症候群など、様々な疾患に対して使用されます。
電気刺激療法は、通常、皮膚に電極を貼り付け、電気刺激を与えることで行われます。
治療は、数分から数十分までの時間で行われ、痛みの程度によって、週に1回から数回まで行われることがあります。
治療の副作用は、通常、軽微なものであり、皮膚の刺激や痛み、筋肉の痙攣などが報告されていますが、これらの症状は通常、治療が終了すると消失します。
治療法の選択には、患者の症状の程度、治療の目的、病歴などが考慮されます。 - 超音波療法:痛みや炎症を軽減するためによく使われる治療法です。
この治療法は、超音波を使用して、筋肉や関節の深部に熱を加え、血流を増やし、柔軟性を高めます。超音波療法には、運動選手や労働者など、激しい身体活動を行う人々にとって、特に効果的な治療法です。
この治療法は、筋肉の緊張を緩和することで、筋肉の柔軟性を向上させ、スポーツでのパフォーマンスを向上させることができます。
また、超音波療法は、炎症を抑制するためにも使用されます。
炎症は、身体の異常な反応によって引き起こされるものであり、超音波療法は、炎症を抑制することで、身体の回復を促進します。 - レーザー療法は、医療分野でよく利用される治療法の1つです。
この治療法では、レーザー光を使用して、患部に照射することによって、細胞の活性化や代謝の向上を促し、組織の修復を助けます。
このような効果は、慢性的な痛みや炎症、創傷治癒の促進に有効であるとされています。
また、レーザー療法は、外科手術に比べて侵襲性が低く、痛みや腫れが少ないため、患者の回復期間を短縮することができます。
さらに、レーザー療法は、美容分野でも利用されており、肌の若返りや、シミやシワの改善にも効果があるとされています。
これらの方法は、物理療法士や理学療法士などの専門家によって行われます。
自宅でも温熱療法や冷却療法は行えますが、適切な方法や時間を守ることが大切です。
運動療法
運動療法では、以下のような方法が用いられます。
- ストレッチング:身体の健康に非常に役立ちます。特に、首や肩の筋肉や関節を伸ばすことで、柔軟性や可動域を向上させることができます。
これは、筋肉と関節がより柔軟な状態になるため、痛みを予防することができます。また、ストレッチングは、筋肉の緊張を緩和することで、ストレスや不安を軽減する効果もあります。
ストレッチングを行うことで、体がリラックスし、心身ともに健康的な状態を維持することができます。 - 筋力トレーニング:首や肩の筋肉を強化することで、姿勢や安定性を改善させます。
筋力トレーニングは、身体の様々な部位を鍛えることができます。
特に、首や肩の筋肉を強化することで、身体のバランスや安定性を改善させることができます - 姿勢訓練:身体の健康維持に欠かせない要素です。
正しい姿勢を身につけることで、頸椎にかかる負担を減らすことができます。
また、良い姿勢は、肩こりや腰痛の予防にもつながります。
そのため、毎日の生活の中で、姿勢を意識することが大切です。
例えば、座りながらパソコンを使うときは、背筋を伸ばして座るようにしましょう。
長時間立ち仕事をする場合は、足を交互に前後に動かしたり、腰をひねったりするなどして、身体を動かすことも重要です。 - 呼吸法:ストレスや筋肉の緊張を解消するための有効な技術です。
深呼吸やリラックスした呼吸をすることで、身体の酸素量が増え、血流が改善されます。
この結果、身体の代謝が活性化され、免疫力が向上します。
また、呼吸法は、自律神経を整え、心身のバランスを取ることにも役立ちます。
日常生活において、呼吸法を積極的に取り入れることで、心身の健康を維持することができます。
これらの方法は、自宅でも行えますが、専門家に指導してもらうことが望ましいです。無理な運動は逆効果になることもあるので、注意が必要です。
手術的治療法
手術的治療法は、保存的治療法に反応しない場合や、頸椎に重度の異常がある場合に行われる方法です。以下のようなものがあります 。
頸椎前方固定術
頸椎前方固定術では、首の前から頸椎にアプローチし圧迫されている神経や血管を解放するとともに、頸椎の不安定な部分を人工骨や金属などで固定します。
この方法は、頸椎の変形やすべりがある場合や、頸椎椎間板ヘルニアがある場合に有効です。メリットは、手術時間が短く、出血量が少なく、回復が早いことです。
デメリットは、首の可動域が制限されることや、人工骨や金属が合わないことがあることです。
頸椎後方固定術
頸椎後方固定術では、首の後ろから頸椎にアプローチし、頸椎の不安定な部分を金属やワイヤーなどで固定します。
この方法は、頸椎の変形やすべりがある場合や、頚髄圧迫症がある場合に有効です。
メリットは、首の可動域があまり制限されないことです。
デメリットは、手術時間が長く、出血量が多く、回復が遅いことです。
その他の手術的治療法
その他の手術的治療法としては、以下のようなものがあります 。
- 頸椎人工椎間板置換術:頸椎椎間板ヘルニアがある場合に、圧迫されている神経や血管を解放するとともに、人工の椎間板を挿入する方法です。
- 頚髄脊柱管拡大術:頚髄圧迫症がある場合に、脊柱管を広げるために一部の骨を切除する方法です。
- 頸部神経根ブロック:痛みが強い場合に、局所麻酔剤やステロイド剤を神経根に注射する方法です。
これらの方法は、それぞれにメリットとデメリットがあります。
手術的治療法はどれもリスクが伴います。
例えば、感染や出血や神経障害などの合併症が起こる可能性があります。
そのため、医師とよく相談してから決めることが大切です。
まとめ
頸椎起因性の肩こりは、首の骨や筋肉や神経などに問題があることで引き起こされる肩こりです。診断方法は問診や視診や触診や神経学的検査や画像検査などです。
治療法は保存的治療法と手術的治療法があります。
保存的治療法は薬物療法や物理療法や運動療法などです。
手術的治療法は頸椎前方固定術や頸椎後方固定術やその他の方法などです。
手術的治療法はリスクが高いので、医師とよく相談してから決めることが大切です。
頸椎起因性の肩こりは、放っておくと重篤な症状になる可能性があります。
早期に正しい診断と治療を受けることが重要です。
また、予防のためにも、日常生活で以下のようなことに気をつけることがおすすめです。
- 長時間同じ姿勢でいないようにする
- 首や肩のストレッチングを定期的に行う
- 枕やマットレスを自分に合ったものにする
- スマートフォンやパソコンの使い過ぎを避ける
- ストレスを溜めないようにする
- 参考:総合南東北病院
- 参考:千葉頭痛 改善センター