はじめに
「走ることは人間の最も自然な動作のひとる」とも言われます。
しかし現代のランナーを悩ませるのは、その「自然な動作」から生まれる様々な不調です。
私たちのからだの中で、膝関節は最も大きな荷重を受ける部分です。
通常の速度で歩いている時に膝関節にかかる負荷は、体重の5〜7倍。ランニングの場合、さらに大きな力が加わります。
健康のため、楽しみのため、競技のため。それぞれの目的でランニングを楽しむ方が増える一方で、膝痛や腰痛などの悩みを抱えるランナーも少なくありません。
ランナーの身体の特徴、起こりやすい障害、そして整体がランナーにとってどのような意味を持つのかについて、詳しく解説していきます。
ランナーの身体的特徴
ランニングが身体に与える影響
ランニングは全身運動であり、特に下半身に大きな負荷がかかります:
主な負荷部位:
- 足部(着地の衝撃)
- 足首(衝撃吸収)
- 膝関節(屈伸の繰り返し)
- 股関節(推進力の要)
- 腰部(体幹の安定)
ランニングによる膝の痛みはバスケやサッカー、野球など、さまざまなスポーツに共通するケガの代表格ですが、ランニングを習慣化している人も膝にダメージを受けやすい傾向にあります。
ランナー特有の身体の使い方
ランナーの身体は、一般の人とは異なる特徴を持ちます:
- 反復動作の継続
- 同じ動作の繰り返し
- 特定の筋肉への負荷集中
- 動作パターンの固定化
- 持久的な筋力の必要性
- 長時間の運動継続
- 疲労への耐性
- 効率的なエネルギー使用
- 衝撃吸収の反復
- 着地時の衝撃
- 関節への累積的負荷
- 軟部組織への影響
ランナーに多い障害
膝関節の障害
1. ランナー膝(腸脛靭帯炎)
ランナー膝はランニングによる膝関節周辺のスポーツ障害の総称で、さまざまな病態が含まれます。最も代表的なのが腸脛靭帯炎です。
ランナー膝はランニング時、ランニング後の膝外側の痛みを伴います。最初は弱い痛み、違和感ですが、対応をせずにトレーニングを継続すると痛みは強くなります。
症状の特徴:
- 膝の外側の痛み
- 走り始めは軽い違和感
- 距離が伸びると痛みが増強
- 階段の下りで痛みが強い
2. 膝蓋大腿関節障害
膝蓋大腿関節障害(しつがいだいたいかんせつしょうがい)は「PFPS」とも呼ばれ、膝蓋骨の裏側や周辺に鈍痛や刺激性のある痛みが症状として現れます。
3. 鵞足炎
鵞足とは、太ももの内側から膝内側にかけて伸びている3つの筋肉の総称です。膝の曲げ伸ばしを過度に行うことにより炎症が起きて、膝の内側にズキズキとした痛みを感じます。
その他の部位の障害
下腿部の障害:
- シンスプリント(脛骨過労性骨膜炎)
- アキレス腱炎
- 足底筋膜炎
腰部・股関節の障害:
- 腰痛(筋筋膜性)
- 股関節インピンジメント
- 大腿筋膜張筋炎
足部の障害:
- 疲労骨折
- 外反母趾
- モートン病
ランニング障害の原因
オーバーユース(使い過ぎ)
ランナー膝が起こる原因として、オーバーユース(使いすぎ)のほか、柔軟性の低下や筋力の低下、ウォームアップ不足などが考えられます。
スポーツ中の動作で、特定の部位に長期間負荷をかけ続けることによって生じる障害を「オーバーユース(使いすぎ)症候群」といいます。ランニングによる膝の痛みはその際たるものです。
身体のアンバランス
多くのランナー膝の原因は、以下のような要因と関係しています。太ももの筋肉の柔軟性不足やアンバランスが膝の動きを制限する。股関節や足関節の可動域が低下し、膝に余計なストレスがかかる。
アンバランスの要因:
- 筋力の左右差
- 柔軟性の偏り
- 動作パターンの固定化
- 代償動作の定着
環境的要因
アスファルトやコンクリートのような硬い表面での走行も、膝への衝撃を増加させ、腸脛靱帯に対するストレスを高める要因です。
環境要因の例:
- 路面の硬さ
- 坂道の多さ
- シューズの適合性
- 気温・湿度
ランナーにとっての整体の意義
一般的なアプローチとの違い
当院の施術の特徴は、医療機関では対応しきれない部分へのアプローチです:
- 全身のバランスを重視
- 痛みの部位だけでない
- 全体の連動性を考慮
- 根本原因へのアプローチ
- 予防的ケアが可能
- 障害が起こる前の対処
- パフォーマンス向上
- 継続的なメンテナンス
- 個別対応の柔軟性
- 時間制限がない
- 個人に合わせた施術
- ランニング特性の理解
整体がランナーにもたらす効果
ランナー特有の痛みの治療からパフォーマンス向上まで神経の連絡を改善する「整体」と深部の筋肉へ直接アプローチ出来る「鍼」でランナーのあらゆるトラブルに対応致します。
期待される効果:
- 可動域の改善
- 筋肉バランスの調整
- 疲労回復の促進
- 怪我の予防
- ランニングフォームの改善
- パフォーマンスの向上
ランニングフォームと身体の関係
効率的なランニングフォーム
そもそも、万人に共通した理想のランニングフォームは存在せず、その人の骨格や筋肉のつき方、普段の生活スタイルなどによって効率的な走り方は変わっていくものです。
良いフォームの要素:
- 重心の安定
- 適切な前傾
- リラックスした上半身
- 効率的な腕振り
- 適切な歩幅
フォーム改善と整体
トレーニング終了後、改めてランニングを撮影しチェックしたところ、一目でフォーム変わっていることがわかりましたという声が示すように、身体のバランスが整うことでフォームも自然に改善します。
マラソンと身体管理
レース前の身体ケア
レースを控えたスポーツマッサージの究極の目的は、本番で持てる力を最大限に発揮できるコンディションに導くことです。
レース前の準備:
- 疲労の蓄積を防ぐ
- 筋肉の柔軟性を高める
- 精神的なリラックス
- 最終調整
レース後のリカバリー
追い込んだ次の日でも体を動かすことで血流を促進し、乳酸や他の代謝副産物を除去するのにいいと言われています。
回復促進の方法:
- アクティブリカバリー
- 軽いジョギング
- ウォーキング
- サイクリング
- パッシブリカバリー
- ストレッチ
- マッサージ
- 温冷浴
- 栄養・休養
- 適切な栄養補給
- 十分な睡眠
- 計画的な休息
年代別ランナーの特徴と注意点
20〜30代のランナー
特徴:
- 高い運動能力
- 回復力が早い
- 無理をしがち
注意点:
- オーバートレーニング
- 適切な休養の確保
- 基礎的な身体作り
40〜50代のランナー
特徴:
- 筋力の低下傾向
- 柔軟性の減少
- 回復に時間がかかる
注意点:
- ウォームアップの重視
- 段階的な負荷増加
- 定期的なメンテナンス
60代以降のランナー
特徴:
- 関節の変性
- バランス能力の低下
- 慢性的な症状
注意点:
- 無理のない計画
- 総合的な健康管理
- 楽しさの重視
押小路治療室のランナーへのアプローチ
ランナーの患者様からの声
当院には、初心者からベテランまで、様々なランナーの方が来院されています。実際の体験をご紹介します。
市民ランナーの方の体験 「走ると必ず膝の外側が痛くなり、整形外科では『ランナー膝ですね。しばらく休んでください』と言われました。でも、走ることが好きで、休むことが苦痛でした。押小路先生の施術を受けて驚いたのは、膝には一切触れず、腰や股関節を調整しただけで痛みが軽減したことです。『重力との調和』という考え方も新鮮でした」
「体の静けさ」とランニング
当院の理念である「体の静けさを取り戻す」は、ランナーにとって特別な意味を持ちます。
ランナーにとっての「体の静けさ」:
- 無駄な力が抜けた状態
- 効率的な動き
- 自然なリズム
- 疲労の軽減
多くのランナーは「頑張って走る」ことに意識が向きがちですが、実は「楽に走る」ことこそが、長く、速く走るための秘訣なのです。
重力との調和という視点
当院独自の「重力との調和」という考え方は、ランナーにとって革新的かもしれません。
重力を味方にする走り方:
- 前傾の活用
- 重力による推進力
- 筋力の節約
- 自然な加速
- 着地の最適化
- 衝撃の分散
- エネルギーの再利用
- 関節への負担軽減
- リズムの創出
- 重力との共振
- 効率的な動作サイクル
- 疲労の最小化
15分施術がランナーに適している理由
「たった15分で効果があるの?」と疑問に思われるかもしれません。しかし、ランナーにとって、この短時間施術には大きなメリットがあります。
短時間施術の利点:
- 練習スケジュールへの影響が少ない
- 朝練前に可能
- 昼休みに利用
- 仕事後でも負担なし
- 身体への負担が少ない
- 過度な刺激を避ける
- 自然な回復を促す
- すぐに走れる状態
- 継続しやすい
- 時間的制約が少ない
- 経済的負担の軽減
- 習慣化しやすい
具体的な施術例
ケース1:ランナー膝の改善 40代男性、月間200km走るランナー。3ヶ月前から膝外側の痛みで悩んでいました。
施術のポイント:
- 腸腰筋の調整
- 骨盤のアライメント修正
- 足部の機能改善
結果:3回の施術で痛みが軽減し、フォームも自然に改善。現在は月1回のメンテナンスで快適に走っています。
ケース2:マラソンタイムの向上 30代女性、フルマラソンのタイム更新を目指すランナー。
施術のポイント:
- 全身のバランス調整
- 呼吸の深さ改善
- 股関節の可動域向上
結果:3時間50分から3時間30分へタイム短縮。「楽に走れるようになった」との感想。
よくあるご質問(Q&A)
- ランニング前後、どちらで施術を受けるべきですか?
-
目的により異なります。障害予防やパフォーマンス向上が目的なら走る前、疲労回復が目的なら走った後がお勧めです。当院の施術は体に負担をかけないため、走る直前でも問題ありません。理想は定期的なメンテナンスとして、週1回から月1回の施術です。
- 膝が痛いのですが、走り続けても大丈夫ですか?
-
痛みは体からの警告サインです。無理に走り続けることは、症状を悪化させる可能性があります。まずは痛みの原因を明確にし、適切な対処が必要です。当院では、痛みの根本原因を探り、走りながら改善できる方法をご提案します。
- シューズやインソールとの関係はありますか?
-
シューズやインソールは重要ですが、それ以前に体のバランスが大切です。体が整っていない状態で高機能なシューズを使っても、効果は限定的です。まず体を整え、その上で適切なシューズ選びをすることをお勧めします。
- ストレッチだけでは改善しないのですか?
-
ストレッチは重要なセルフケアですが、それだけでは限界があります。筋肉の硬さの原因が、実は他の部位のアンバランスから来ている場合が多いからです。整体では全身のつながりを考慮し、根本的な改善を目指します。
専門家としての見解
ランニングブームの光と影
近年のランニングブームは素晴らしいことですが、同時に懸念も感じています。
懸念される点:
- 急激な練習量増加
- 不適切なフォーム
- 休養の軽視
- 痛みの我慢
薬だけ、マッサージするだけ、電気をあてるだけ、歪みを整えるだけでは、根本改善することは難しいのです。
整体の役割
ランナーにとって整体は、単なる「治療」ではなく、より良いランニングライフのパートナーです。
整体が提供できること:
- 障害の予防
- パフォーマンスの向上
- 身体感覚の向上
- 長期的な健康維持
最後に
走ることは人間の基本的な動作であり、喜びです。しかし、その喜びが痛みや苦しみに変わってしまっては本末転倒です。
押小路治療室では、「体の静けさを取り戻す」という理念のもと、ランナーの皆様が本来の「楽に、美しく、速く」走れる状態を取り戻すお手伝いをしています。
15分という短時間の施術ですが、そこには20年以上の経験と、5万件を超える施術実績、そして「重力との調和」という独自の視点が込められています。
ランニングでは、ただ脚だけではなくて、脚の付け根から脚をだすことが重要。このような体の使い方も、体が整ってこそ可能になります。
ランニングは生涯スポーツです。20代の若さで記録を追求するのも素晴らしい。60代、70代で健康のために走るのも素晴らしい。それぞれのステージで、それぞれの楽しみ方があります。
当院は、すべてのランナーが、痛みや不調に悩まされることなく、生涯にわたって走ることの喜びを味わえることを願い、そのサポートをさせていただければ幸いです。
風を感じ、季節を感じ、自分を感じながら走る。そんな本来のランニングのいつまでも楽しんでください。
参考
- 参考:日本臨床スポーツ医学会
- 参考:日本陸上競技連盟(日本陸連)
- 参考:日本体育協会(日本スポーツ協会)

